
「この世で1番美味しい料理は、お母さんの作る料理だよ」
タイトルに使ったこの言葉。
これは以前、NHK放送『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、田中健一郎氏の特集が組まれたときに登場した言葉です。
田中健一郎氏といえば、現在の帝国ホテルの総料理長を務められるお方。
125年の伝統を誇る帝国ホテルにおいて、「総料理長」の称号で呼ばれるシェフは、「ムッシュ」と慕われた先代の村上信夫氏、そして、田中氏の2人だけ。
去年、厚生労働省認定「現代の名工」にも選ばれた、偉大なシェフです。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」では、いろいろな職業の「一流」と言われる方々が、時に苦悩され、時にどん底の時代を経験していたことなどを、赤裸々に話されていて、その姿にいつも感銘を受けています。
田中氏の放送回は、ご自身の「料理は“人”なり」という流儀に沿った、「料理 × 人」をベースとして展開していきます。
作り手の気持ちが込められてこそ、料理はおいしくなる。
逆に、作り手に悩みや疲れなどがあれば、客を感動させる料理にはなりえない。
そういう意識を常に持ち続けているからこそ、田中氏はいまだに毎朝欠かさず400人の部下、ひとりひとりに「仕事にはもう慣れた?」「腰はもう大丈夫?」など何気ない会話をします。
それにより、部下の方の内面や体調を読み取り、最高の状態でいられるように心を砕いているそうなのです。
この放送回で、私が特に印象的だったのが、先代の総料理長である故ムッシュ村上氏(村上信夫氏)が、田中氏に「今まで食べた中で一番おいしかった料理は何だね?」と尋ねるシーン。
返答に困る田中氏。
そこで、ムッシュ村上氏が発したのが、タイトルにも使った、この言葉でした。
「この世で1番美味しい料理は、お母さんの作る料理だよ。」
ムッシュ村上氏が意図していたのは、
「美味しいものを食べさせようという気持ちがいっぱい詰まっている。だから、お母さんの料理が一番おいしい」
「どんなに高級な良い食材を使っても、『想い』『愛情』を注がないと、美味しい料理はできない」
ということ。
技術や知識ももちろん大事。
でも、人を喜ばせることができる料理は、愛情のこもった料理に他ならないのですよね。
それを日本でフランス料理を広めた功労者であるムッシュ村上氏が発言したということが、とても胸に響いたエピソードでした。
「(気力・体力を)回復させる」「(相手を)元気づける」の意味を語源にもつレストランのように、相手が元気になったり、幸せになれるような料理を作ってもらいたい。
そういうコンセプトで始めた料理教室。
生徒さんが「おいしい!」と言いながら試食タイムを過ごしてくださるときや、メールで「家族に作ったら、おいしいと喜んでもらえました!」とご報告いただけるたびに、この言葉を思い出します。
この連休中もまた、この言葉を思い出すような家族の温かみにあふれた食事をとる機会があったので、ふと文章にしたくなりました。
引き続き、楽しい連休となりますように・・・*