脳科学者目線での、「人格力」

普段テレビをほとんど見ない私でも、欠かさず見ているのが『ドクターX』。
基本的に、ホラーやドキドキ・ハラハラするようなものがあまり好きではないのですが、『ドクターX』は、いろいろあっても結局は「絶対失敗しない」という安心感でみられるので、とても楽しみにしています。笑

第5話のあらすじとしてはこちら。

若き天才棋士・五反田五郎が将棋ロボットとの対局中に腕のけいれんを起こして意識を失う。
その原因がつかめない中、最先端の人工知能診断システム「ヒポクラテス」のデータにより、天才棋士は脳に細菌が感染し、膿がたまる脳膿瘍(のうのうよう)だと診断される。
しかし米倉涼子演じる女医・大門未知子は、「なんか違う」と一言。
反論するものの、やがて手術が決まり・・・

11月16日までは無料で動画が閲覧できますので、もし続きが気になる方はチェックしてみてください。
http://www.tv-asahi.co.jp/douga/doctor-x_05_cu/1919/?official=1

簡単に言ってしまえば、今週のドクターXのテーマは
「天才棋士 vs 将棋ロボット。人工知能 vs “絶対失敗しない”医者」
というものでした。

このテーマ、ちょうどつい先日読んだ、棋士 羽生善治さんと 脳科学者 茂木健一郎さんとの対談をまとめた『考える力』にも出ていた内容で、個人的に旬な話題だったこともあり、興味深く見ていました。

以下、ネタバレも含まれていますので、5話の結末を知りたくない方は読まないことをお勧めします。汗

* * *

人工知能(AI)が医療現場に入っていくというのは、ドラマの世界の話だけではなく、現実にも聞きます。

たとえば、私の主人は薬剤師ですが、株式会社ジャストシステムが行った
「人工知能に置き換わってほしい医療職は?」
という調査で、薬剤師は医療事務に次いで、なんと第2位だったそうです

ドラマの中でも、AIの考える力は人間よりもはるかに上回っていると嘆くシーンがありました。




そんな中で、人間が人工知能に負けないものとは。

ドラマでのセリフでは、こう言っていました。

「AIには、勘とかひらめきとかがないから。もし人間がAIに勝てるとすれば、そこだと思うんです。」

女医・大門未知子が人工知能が「脳膿瘍」と診断した結果に対して「なんか違う」と発言したことも、彼女が数多くのオペを経験してきたうえで感じた「勘」が働いたものでした。
結果的には、その勘が正しく、人間の勘・ひらめきが人工知能に勝った、そして天才棋士も、手術成功後の将棋ロボットとの対局で無事に勝利する、という話で第5話は終わります。

* * *

冒頭でご紹介した 羽生善治さんと茂木健一郎さんの対談をまとめた文庫本『考える力』の話です。
この本の中では、まさに今回のドクターXのテーマとなっていた「コンピューターと人間」についての話題が、大半を占めていました。

この対談は、2011年2月に、朝日カルチャーセンター新宿教室で行われたものだそうで、会場からの質問として、とある女性の「もし子供の時から実際の盤や駒を一度も使わずに、パソコンやゲーム機だけで将棋をやり続けていたとしたら、今の実力をつけることができたと思いますか?」という問いに対する羽生さんの返答は、なるほどなあと感じるものでした。

「コンピューターと人間」についての羽生さんや茂木さんのご意見の詳細に興味のある方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください。

私がこの本でご紹介したかったのは、「あとがきにくわえて」に掲載されていた茂木健一郎さんの言葉です。

茂木さんはこの「あとがき」の中で、

羽生善治さんとは、何度かお目にかかり、お話をする機会を得ているが、時が経つにつれて、繰り返し思い出すのは、羽生さんの「人格力」である。

と述べられています。

最近、さまざまな分野・場面で「〇〇力」という言葉を聞きますが・・・

そもそも「人格」とは何か。

研究者の間では、5つの大きな要素(ビック・ファイブ)があると言われているそうです。
ビック・ファイブというのは、

① どれくらい、新しい経験に開かれているかどうか。
(せっかく新しいことに出会えても、そこから学ぶ姿勢がなければ、変わることができない。)

②どれくらい良心的に、与えられた課題に取り組むことができるか。
(良心的に取り組むことができなければ、せっかく能力があっても、力を発揮することができない)

③ その人がどのくらい、外交的かどうか。
(もちろん外交的であればよいというわけではない。内向的な性格も、生かすことができれば、その人の持ち味になる)

④ どれくらい親しみやすいかどうか。
(一緒にいて苦にならない、という人格は、一つの大きな魅力になる)

⑤ その人が、あれこれ悩んだり、くよくよと考えたりする傾向があるか。
(特に理由がないときでも、思い惑う人はいるものである)

この5大要素(ビック・ファイブ)を中心として、人間の人格は形成されるそうです。

さまざまな職業が、人工知能の台頭によって、今後なくなってしまうのではないか、という研究がなされていますが、それでも人工知能が、人間に当分追いつけない分野。
それが、人間の「人格」だと、茂木さんは言います。

人格はとても複雑で、上記の5大要素が、いくら統計的に大切といわれていたとしても、その詳細は科学的にまだ解明されていないのです。

囲碁や将棋で勝ったりするような、技術的なモデルはどんどん完成していっていますが、「人工知能」をコンピューターやロボットに搭載する際に必要な、数字や数式で書くことのできる定量的なモデルが、「人格」に関しては、まだ存在していないそうです。
将来的に、ドラえもんが作られるときが訪れるなら、そのときは「人格」に関する数字や数式が解明されたときなのかもしれませんね。笑

まだ解明されていない「人格」というのが、これからの時代においてはとても大切になってくる、というのが茂木さんが「あとがき」で強く訴えたかったことのようです。

* * *

医療現場だけでなく、これからさまざまな局面に人工知能が出ていくことは間違いないです。そんなときに必要になってくる「人格力」。
「人格力」というと、とても広義な気がしますが、人間にあって、人工知能にないもの。

悩み、まどい、苦しみ、はっと気づいて勘・ひらめきを感じ、そしてそこから工夫して一歩ずつ前進していく。

ドクターXを見ていくと、その「人間らしさ」が毎回のテーマに組み込まれているなあと感じます。
だから「絶対に失敗しない」という一種ロボット的な女医・大門未知子に対しても、ロボットではない人間味を強く感じるのかもしれません。

人工知能を通して、ますます人間力・人格力が問われる時代。
料理家や職人さん、作家さんなどクリエイティブな仕事は「非定型的な仕事」として”人工知能に仕事を奪われにくい”と言われていますが、それでも時代の流れが「人格・個性」を重要視しているので、その流れに置いて行かれないよう、さまざまな経験や第一線で活躍されている方々の意見を映し鏡としながら、自分の強みや弱みは何なのかを考えていきたいものです。

 

 

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