日本と西洋の美意識の違い

現在、大阪市立東洋陶磁美術館で開催中の「フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年 」

実は?すでに2回観に行っていて、今月もまた行く予定です。
(好きな分野の展示があるときには、最低2回以上は観に行くのが恒例。
初見は先入観なしに、自分の感性で作品を見ることを楽しみ、それ以降は図録を熟読したり、学芸員の方の話を聴講した上で、頭で考えながら見ることを楽しむのが好きなのです。)

2回目にセーブル展を観に行くときには、事前に読んでいた、高階 秀爾先生の著書『日本美術を見る眼 東と西の出会い』の影響もあって、セーブル磁器を通して 日本人の美意識について考えながら鑑賞しました。

とても内容の濃い本で、簡潔にまとめることは難しいのですが、私の意見も含めながら、特に興味深い部分を少し要約しながらご紹介。

久しぶり?のスーパー自己満足アウトプット用の投稿です。
超長文につき、就寝前の睡眠導入剤としてお読みいただければ嬉しいですw笑

GWに有田にある九州陶磁文化館に行ってきたばかりなので、肥前磁器と、フランス・セーブル磁器の対比をとても興味深く感じています。

以前読んだ、故・14代酒井田柿右衛門の『遺言』に書かれてあった、「『綺麗』と『美しい』は、違う。」という言葉。

人間国宝である十四代柿右衛門が、ドイツのマイセンの職人さんたちと話したときに感じたという、西洋と日本の美意識の違い。

柿右衛門窯の磁器と、セーブル窯の磁器を比べると、面白いくらいにそれが表現されているなあと感じました。

高階 秀爾先生(改めてご紹介すると、私の学生時代には大好きな地元・倉敷が誇る大原美術館の館長、そして10年前まで今 私の通う京都造形芸術大学の大学院長だった、日本を代表する美術史家)の著書によると、、、

日本語の「うつくし」という言葉は、万葉集の時代では、いま私たちが使っているような「美」を意味するものではく、「親や妻子に対する愛情」を表す言葉だったそう。

それが平安時代になると、『竹取物語』で発見されたばかりのかぐや姫が「3寸ばかりなる人うつくしうていたり」と述べられている例にもあるように、「小さなもの、可憐なものへの愛情」を表す言葉にかわり、室町時代頃からようやく、今日の「美しい」に近い意味に用いられるようになったそうです。

では、その”今日の「美しい」に近い意味”をもつ言葉、つまり 「美」を意味する言葉は、昔は何だったのか?

それは、「くはし(後に”詳し”になることから、細かい・微細な、という意味)」や、「きよし(清らかな、という意味)」が美を意味する言葉として使われていたそうです。

この言葉の歴史を見ていると、『日本人の美意識の特質』というのは、

① 「うつくし」が、もともと愛情表現を意味することからもわかるように、きわめて情緒的、心情的である

②「くはし(細)」「きよし(清)」に見られるように、日本人は、「大きなもの」「力強いもの」「豊かなもの」よりも、むしろ「小さなもの」「愛らしいもの」「清浄なもの」にいっそう強く「美」を感じていた

ということ。

これは、西洋の美意識の根となったギリシャにおいて、「美」が「力強いもの」や「豊かなもの」と結びついていたのとは、特質的に正反対であるといえます。

(ちなみに美に「力強さ」を求めるのは、西洋だけでなく中国においても同様なのだそう。
漢字の「美」は、もともと「羊」の「大」なるもの、「麗」は、「鹿」の角の大きなものを示す文字。)

河北倫明の著書『日本文化研究』によると、ローマで開催された日本古美術展の会場を訪れた時、豪壮雄大と言われている桃山時代の作品ですら、ローマという環境のなかではむしろ「優美可憐」に見えたといいます。

西洋の美意識が生み出した作品と対比して見た場合、日本の美術は、たとえ桃山時代の豪華な襖絵や屏風であっても、全体としてやはり「優しく」「美しい」ものなのである、と高階先生は述べます。

また、「小さなもの」「縮小されたもの」「清らかなもの」と並んで、「余白を重要視する美学」というのも、日本人の美意識の特徴。

多彩な色彩を拒否して墨一色に全てをかけた水墨画、
派手な装置や動きを極度に抑制した能の舞台、
「余白の美」を追求した柿右衛門様式の磁器、、、

そういったものに対して、逆に豊かで奥深い美を見出す感受性は、まさしく「きよらか」なものを美しいと見た先祖の感受性を受け継いでいるからこそ。

そういった日本人特有の美意識を意識しながら、豪華絢爛なセーブルの磁器を見ると、新しい発見が得られるような気がします。

セーブル展には、ジャポニズムの影響を強く受けた作品も多数展示されていましたが、そういった作品を目の当たりにするたびに、私は日本人であることを心から誇れるようになります。

西洋磁器を通して、日本人のアイデンティティを認識することができる、その感動や興奮を、まだまだ沢山の方々とシェアしていきたいものです。

セーブル展は7月16日まで開催中ですので、お時間のある方は是非*

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